『魚氷に上る』
飯田眞理子
第1句集『魚氷に上る』
北辰社銀漢叢書
定価:2,000円+税
序:伊藤伊那男
水中で鵜は飛んでゐるかもしれぬ 飯田眞理子
もちろん、句集の大半の俳句は取材に基づいた写生句で築かれているのだが、掲句の発想には驚かされた。写生句から逸脱しているかもしれないが、ここに行き着くために写生句を身に叩き込んできたのではないかとも思われる。他の作品には無い童心のつぶやきのような力の抜けた発想がいい。
ちなみに写生を活かした句では
龍の背のうねりにも似て雪解川
み吉野の魚氷に上り贄の皿
かんばせを和紙で眠らせ雛納
闘牛のこらへる足の砂深く
お水取禊のごとく火の粉浴ぶ
貝寄風や太子の像のみな若し
踏青や朝儀の庭を縦横に
神の田の一枚ごとに蝌蚪の国
禁色の色なり都忘れとは
落し文吉野にあらば綸旨かと
個人的に好きな季語を配した俳句
伎芸天のすがた佐保姫かと思ふ
鷹鳩と化し鐘楼にならびゐる
龍天に登り竹生島(ちくぶ)に靄立てり
歌垣の地に鳴きをるは亀ならむ
伊勢の田の雀は御饌の蛤に
(いいだ まりこ)「銀漢」でも歴史好きとして知られ、日本古代史を学び、奈良の古代遺跡の発掘現場を訪ね、その源流の韓国・中国の遺跡を何箇所も巡る取材を通した30年の句業の上澄みがこの句集である。伊藤伊那男序文より
皆川盤水に師事「春耕」を最年少で同人。平成16年「春耕新人賞受賞」、「銀漢」創刊同人。平成26年「銀漢賞受賞」。俳人協会会員。
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