『祝日たちのために』
中嶋憲武句集『祝日たちのために』
発行:港の人
定価:¥1500 新書判:188×120mm
丸々一冊が中嶋憲武の世界なのだ。というのは俳句はもちろんのこと、本文に散りばめてある10枚ほどの版画(銅版画?)も憲武の画であるし、中のエッセイも勿論憲武のものだ。この句集を手にした人に何か得をした気分にさせてくれる。 文字が小さいのがちょっと気になるがデザイン構成からみて全体のバランスがいい。おそらく老眼鏡世代よりももっと若手の読者を対象にしているものと思われる。憲武の世界といったが、俳句、エッセイ、絵が混ざりあって中嶋憲武の世界に誘ってくれるのだ。
赤糸を切りうぐひすの世のはじまらむ
陽炎に葬儀の写真ずつと見せる
なめらかな晩春折れ続くけむり
闇を守宮生きをり青く浮く血管
凌霄花辿れば暗緑の母系
あをく泳いで具象画のやうな疲れ
ひとの手の葉月ものいふ鳥を載せ
秋はひとり寒冷紗手のなかに丸め
冬薔薇の花弁は鶴を折る感じ
火星おほきくマラカス振りつづける海月
●なかでも好きな三句●
サンドウィッチの匂ひのなかの蜃気楼
手が空いてゐる月白の舟を出す
流星の頃はひとさし指長し
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